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Out of thin air

日々の雑感や自作小説、ブックレビュー、映画感想などを気ままに更新するブログ。たまにサラッと毒を吐きます。

小噺『二人の社長』

カテゴリー : 小噺
 その男が部屋に入って来るのを、猿顔の男は立ち上がって迎えた。

「お会いできて光栄です社長」

 猿顔の男が差し出した右手を社長と呼ばれた男は無視する。構わず一人掛けのソファに座ると向かいに立つ相手へ顎で席を勧めた。余所の土地へ足を踏み入れながら、その態度は我が家で横暴に振る舞う独裁者のものだった。猿顔の男は恭しく頷いて腰を下ろす。

「私は遠回りな話が嫌いです」言うと社長はズバリ要件を切り出した。「うちから二人ほど人材を貸して欲しいそうですね」

 猿顔の男は再び頷いた。

「貸すことは貸しましょう。条件面で折り合えばすぐです」

 ただし、と社長は声を落す。

「そちらには我々の要求するレンタル料が高いという声もあるそうじゃないですか。こちらは好意で貸すのに文句を言われたら堪りませんな」

 社長の目が細まると射竦められた猿顔の男は日向に置いた雪だるまのように滝の汗を流した。薄い髪が額にベッタリ張り付き、ただでさえ貧相な見た目がさらに頼りなく見える。彼はしどろもどろに口を開いた。

「そ、それは一部の人間が叫んでるだけです。大多数は諸手を上げて賛同しております」

「本当ですか?」社長は疑わしげに睨み付けるが、すぐに「良いでしょう」と態度を軟化させた。

「どのみち我々には関係の無いことです。この件が破談となって困るのは、そちらなのですから」

 その言葉に猿顔の男は安堵の溜め息を吐いた。

「しかし不穏分子の芽は早めに摘むに限りますな」

 どうするか分かりますね、社長は口頭で説明する代わり目で語りかけた。猿顔の男は本日三度目の首肯で返す。密室で男二人。無言の取り引きが成立した。

   *******

「どういうことですか!?」

 電話が繋がって最初に口を開いたのは社長だった。棘のある言葉が吐き出されるたび猿顔の男は身体を小さく折り畳む。

「まさか最初からレンタル料を滞納するとは思いませんでしたよ。これじゃ何のために人材を貸し出したのか」

 猿顔の男は電話越しに土下座せんばかりの勢いで頭を下げる。

「申し訳ございません。しかし急激な業績の悪化もあり、思うように費用の工面が出来なくなりまして」

「そんなことは知りませんな。何故そちらの都合を考慮しなければならないのです。約束を反故にするなど人間として最低ですよ」

 犬畜生にも劣る、これだから能のない猿はなど罵詈雑言を吐き出す相手にも、猿顔の男は一言も返さずただ頭を下げ続けた。

「そもそも業績の悪化はどういう訳です。こんな短期間で会社が傾くなど通常ではあり得ませんよ」

「それなんですが。御社からの人材借り出しに反対する人間を解雇したところ人手が不足し業務に支障が……」

「何故そんな馬鹿な真似を」

 他でもない貴方が言ったことでしょう。猿顔の男は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

肩こりになりますか?

カテゴリー : 雑記
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 常に凝ってます。程度は酷くないので普段そんな気になりませんが、たまに首痛くなるときあります。俺の場合、昔ちょっと車に撥ねられてから身体のバランスが左右崩れてるので、それが影響してるのかもしれません。

 頭は打ってないはずなのに、こんな人間になってしまいました。つまり元から残念な感じだったということです。

<一口メモ>
 肩が凝るという日本語を作ったのは夏目漱石。彼の小説『門』に登場したのが最初とされています。それまでは肩がつかえるや張るが一般的でした。漱石もどこかで聞いて、作中に使用したことで広まった可能性もありますが。
http://www.nabolin.com/condition/self/column/soseki.html

 明治や大正は今の日本語の原型となる色んな言葉が生み出されました。自由も明治に外来語を訳すため作られた造語で、江戸以前の日本に自由という言葉はありませんでした。

今回のエンディング
岩男潤子『ETERNAL BLAZE(BOSSAアレンジ)』

ANIME ON BOSSA より。

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