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Out of thin air

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『記者クラブって何だ!? 』村上 玄一

カテゴリー : 猛読日記 小説以外
 ニュースを見てますと「国会記者クラブ」や「警視庁記者クラブ」などの単語を耳にすると思います。この“記者クラブ”という日本独自の組織はどういったものか、どのようにして成立し今に至るのかを200ページ足らずではありますが実によく纏めています。ページ数が少ないからこそ過不足無く伝えるべきことを書けたのかもしれません。

 まず本書は当時の長野県知事である田中康夫さんが出した「脱記者クラブ宣言」の概要を説明するところから始まります。宣言の内容、なぜ記者クラブが問題視されたのか、それに対して大手マスコミはどのように対処したか。

 記者クラブの問題性として第一に挙げられるのは排他性です。通常、記者クラブ主催の会見にはクラブ参加者以外の出席は認められておらず、報道の自由や公平性といった点で疑問の声があります。記者クラブは各省庁や自治体に記者クラブ室を設け常駐していますが、クラブ参加者以外は入室すら許されません。

 記者クラブ室の存在が二つ目の問題です。この記者クラブ室なる部屋は全て取材対象者から提供を受けています。当時の長野県なら県庁舎の一部を無償で提供していました。光熱費その他諸々の経費も全て長野県の払いです。これらは試算で年間1500万円超と言われています。

 ここまでして各省庁や自治体が記者クラブを手元に置いておくのは少なからず彼らにも都合の良い面があるからです。どうしても地元住民の理解が得たい場合、知事自ら声を大にして言うより大手マスコミに頼んで、一斉に提灯記事書いてもらったほうが楽だし効率的ですから。逆に記者クラブを敵に回すと厄介です。ペンは剣よりも強し。各社手を結んだネガキャンでアっと言う間の袋叩きです。

 これら既得権益化した記者クラブへの便宜供与をやめよう、というのが脱記者クラブ宣言の中身でした。これに対して記者クラブ側は表立って反応することはほとんどありませんでした。脱記者クラブ宣言に対する見解を発表するに止まり、知事と真っ向から打ち合うことは避けました。取材対象者からの便宜供与は長野県だけの問題ではなく、ことを荒立てれば全国的な記者クラブ批判が始まることは必至。記者クラブというのは文字通り「記者のクラブ」、親睦会的な集まりなんだと国民には思っておいてもらいたいんです。取材対象者との癒着など知られたくない。

 俺がたまに思うのは、大手マスコミほど日本人の民度は低くあって欲しい、馬鹿のままでいてほしいと考えてるんじゃないかってことです。お上から流れてきた情報を精査することなく垂れ流しても誰も不思議と思わない、冷静に考えれば可笑しいと気付くのに疑うことすら知らない。新聞が書いてるんだから、テレビでやってるから正しいと頭から信じる。これほど扱いやすい集団はありません。

 記者クラブという組織が21世紀に突入した現在でも残っている、あるのが当たり前と現場の記者などは考えるまでになった理由の一つに、国民の無関心があると思います。誰も記者クラブの存在に疑問を持たなかった、どんな組織で如何なる活動をしてるか考えもしなかった。そのことが結果的に彼らを助長してしまったのではないでしょうか。

 ここまで根が深くなってしまった記者クラブを今から根絶するのは難しいでしょう。ガン細胞で言うなら既に全身くまなく転移して手術すら行えない状態です。無理に潰そうとすれば日本のマスコミ機能全体の死を招く恐れがあります。まず現時点では国民一人々々が記者クラブとは何か知り、根深い問題に気付くことが重要。質の高いマスコミ報道を求めるなら、まずは国民が質の高い監視者となる必要があります。油断のならない情報の受け取り手として常にプレッシャーをかけ続ける。

 拙速を求めるのではなく、全体の問題として長い時間かけて変えていく。

 自分たちも参加者なんだという意識。その自覚なくして無責任な制度批判で形ばかりの改革を行っても、すぐまた元に戻ってしまうでしょう。

記者クラブって何だ!?
村上 玄一
同朋舎
2001-11
定価 ¥ 1,365
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記者クラブに関する初めての一冊としてお勧め
非常に勉強になりました。
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